塩川税理士事務所

気をつけてください。だまされやすい土地活用

  従来より建築業者と銀行と税理士が手を組んで、土地の相続対策として借入金で賃貸アパート(マンション)を建てる手法を盛んに売り込んでいます。

  確かに相続税対策だけを考えると現金が建物に替わると評価額が5割以上下がり土地の評価も下がるので間違いなく効果的な対策であります。しかし、建物を建てるということは、再販価格を考えると実際に財産の価値はそれだけ下がっているのです。これを賃貸収益で取り戻すのがこの対策の基本です。つまり収益で取り戻せなければこの対策は破綻するのです。

ここにきて賃貸物件の供給過剰が顕在化し、よほど立地条件が良くないと事業として採算が採れない状況になってきました。

不況の影響で建築業者は今大変な状況になっています。以前は、分譲マンションは完成前に売り切っていたものが、今では建築後も売れ残り、投げ売りするような物件も出てきました。 一括借り上げや家賃保証をする業者もありますが、入居者が減れば、契約など関係なく家賃を値下げしてきます。これらの業者も家賃の値下げや空き室の増加によって採算性が悪化し、無理をしてでも利益を確保しなければ会社を維持できなくなってきました。 少子化により人口が減少する状況では、最も有望な賃貸人である若い世代が減っていく以上この対策は、もはや事業として成り立たすのは至難の業でしょう。

  そのような中、建築業者は古い賃貸物件や使えそうな土地を見つけると持ち主を探して、しつこく賃貸物件の建築を勧めてきます。業者の側からすると少しでも多くの物件を売らなければ利益を出せないのですから必死です。しかし、資産家はそれを助ける必要はありません。相続税が減っても財産が減ってしまっては何にもなりません。採算性のない事業に投資することは避けなければなりません。

  現在の経済情勢から考えて借り入れにより投資をすることは自殺行為です。リスクが高すぎます。自己資金で賃貸物件に投資するとしても事業計画をよく考えた上で決断することが必要です。決して業者の作った事業計画を信用してはだめです。特に1億円程度の財産であれば相続税(相続人が妻子2人法定相続分で315万円)を払った方が少なく済みます。賃貸物件への投資は自殺行為です。わずかの相続税をなくすために借金を子供に残してどうするのですか。

無理な相続対策は、子供を巻き込んで一生賃貸物件と借入金に縛られます。入居率を気にしながら管理や修繕に悩む。そんな生活と多少高くても相続税を払ってお金に余裕のある安心な暮らしのどちらが幸せですか。

  土地活用のプランを検討したいときは必ず業者とつながりのない税理士に相談してください。業者は必ず有利に見える資料を作ってきます。リスクを防ぐためなら、投資全体に比べると税理士の報酬などわずかなものです。

  このことに関する相談をたくさん受けています。多額の相続税がかかるから(本当に嘘が多い)とのセールストークにだまされて、どう考えても採算がとれないのに契約してしまった例もたくさんあります。また、最近受けた相談で10年前に相続対策で賃貸アパートを何棟も建てたものの今はほとんど空き家になってしまった案件もあります。実際に破産したケースもあるようです。

  現状の相続対策としての土地活用は、古い建物ならばできるだけ安くリフォームして使い続ける。更地ならば土地だけを貸して業者に活用させる。相続対策だけであれば土地の分割方法を検討して評価を下げる等の対策を検討します。今後大きくインフレに振れれば、対策も異なってきますが、現状では、できるだけ資金を使わない方法を考えることが最善の策であると考えます。

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