塩川税理士事務所

税務調査で最も問題となる名義預金

  相続税の申告で大切なことは、被相続人の財産の確定ですが、最も問題となるのは夫婦間でごっちゃになってる妻名義の財産です。

  夫が勝手に妻名義で定期を作ったり、株を運用したり、妻が家計から少しずつ貯金して貯めたとしても、妻への贈与ではないので、相続税の調査で否認されることが多いようです。今は本人確認が厳しいので減ってはいますが、これからの相続ではまだまだありそうです。

  このとき安全策として妻名義の預金をすべて相続税で申告する税理士もあるようです。もちろん安全性の判断は税理士によって違いますが、妻の預金がすべて夫からの資金とは限りません。若いときに働いて貯めたり、パートで働いたりして自分で儲けた資金もあるはずです。ですから妻の働き始めてから現在までの状況を詳しく教えていただいて、そこから妻固有の財産を確定する必要があります。

  生前贈与にしても、たとえば10年以上前の贈与であっても贈与の要件を詳しく検討して贈与が成立しているか確認する必要があります。申告をしていないから贈与が無効と言うことではありません。実際贈与税の除斥期間(時効は)通常6年ですが、意図的に申告しなかった場合は7年という規定がある以上、贈与の成立に贈与税の申告の有無は無関係です。

  名義確定が困難な財産があったとしても、事実関係を詳しく検討すれば被相続人、相続人の理論的な固有財産額は確定可能です。なお、相続人の預金を調べないで、明白な名義財産が申告漏れにならないように注意する必要もあります。

  安全策をとれば「税務調査のない相続税の申告」は可能ですが、税理士としてできる限り正確な財産の帰属を検討して申告すべきで、そうすると当然税務当局と議論になることはあります。経験的には、しっかりと理論構築すれば否認されることは無いと思います。いずれにしてもリスクを説明して最終的には相続人に決めていただくことになりますが、税務調査を恐れるあまり、安全策で申告しておこうというのはいかがなものかと思います。

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