塩川税理士事務所

誤った連年贈与の解釈

  今回は未だに流布されている「連年贈与」の誤解について解説します。 「連年贈与」とは、たとえば毎年110万円を10年間贈与しますという契約をした場合は、契約した日の属する年分の贈与税の申告は110万円×10年間の1100万円を贈与したことになるという取り扱いのことを言います。これは、国税庁のタックスアンサーに解説があります。

No.4402 贈与税がかかる場合
[平成31年4月1日現在法令等]

毎年、基礎控除額以下の贈与を受けた場合

Q1.親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか。

A1.各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。 ただし、10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与を受けることが、贈与者との間で約束されている場合には、1年ごとに贈与を受けると考えるのではなく、約束をした年に、定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかりますので申告が必要です。 なお、その贈与者からの贈与について相続時精算課税を選択している場合には、贈与税がかかるか否かにかかわらず申告が必要です。

(相法21の5、24、措法70の2の4、相基通24-1)

国税庁タックスアンサーより引用

  以上の通り10年間100万円を贈与しますよと言う契約を結んだ場合には定期金契約として、まとめて課税しますよという話で、市販されている解説書によく書いてある「連年贈与で課税されるのを避けるために贈与の日や金額を毎年変えなければならない」ということとは関係が無いことなのです。毎年の判断で贈与するのであればたとえば誕生日に100万円贈与することを何年続けても定期贈与契約にはならないことは誰でもわかることです。逆に相続税調査の時に20年前から毎年200万円づつ毎年同じ日に贈与していたので20年前に課税されるはずですが時効だから課税できません。なんて話が通るはずがありません。また、税務署としても毎年同じ日に定額の贈与があるのを見つけて遡って課税するとしても何年の贈与契約と考えるのでしょうか。7年前に始めたのなら6年の時効で課税できないなんて話になるのでしょうか。実際、私は税務署に居りましたがこの件で課税したという話は聞いたことがありません。もし課税された経験のある方はご連絡いただけないでしょうか。税法の研究者としてどのように課税されたのか大変興味があります。

  毎年金額や月日を変えないと連年贈与(定期金契約)で課税されるというのは、全然関係なくておそらく上記のタックスアンサーの解説を見て何も検証しないで何も考えないで書き写しているだけです。専門家としてどうなんでしょう。残念なことに事例集に頼って税法を見ない専門家が多いようです。 

  ここで大切なのは、毎年の贈与は同額同じ日でもかまわないけれど、実際に贈与が行われたことを証明できるかということが何よりも重要で専門家としてしっかりと確認しないといけないところです。相続税の調査で論点になるのは財産の帰属が誰かと言うことです。毎年贈与していても受け取る側が知らなかったり、知っていても贈与を受けた預金通帳を贈与する人間が管理していたのでは贈与自体が認められなくて贈与者の財産であると認定される可能性が高いのです。ですから贈与を受ける側が当然知っていて受贈者が自由にお金を使える状態であることがとが必要です。私は、いつも贈与する場合は通帳と印鑑を渡して実際に少しでいいからお金を引き出して使った方が良いと言うことを助言しています。

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